芸術書

小さいとき、家族で出かけると、必ず寄る本屋さんがありました。

いわき市の中では大きな町の、駅前の小さな書店でしたが、
うちの家族が立ち寄ると、店主のおばちゃんが揉み手で出迎えて、
「センセ、良いのが入ってますよ♪」と店の奥に案内します。

母と私たちは、入り口近くの童話や小説のコーナーで本を物色して待っていました。

好きな本を買ってもらえるのが嬉しくて、本屋さんに寄るのは嬉しかったです。

父はと言うと、先ほどのおばちゃんと、奥で何やら盛り上がっていて、
出てくると大きな紙袋にいっぱい、本を買ってくるのでした。


「パパ、本いっぱい買ったね。何の本?」と聞くと、
満面の笑みで「芸術書だ」


月に2回ぐらいだったでしょうか?
その本屋さんに行く=芸術書を買う、頻度です。


いつしか両親はボウリングにハマり、ほぼネグレクト状態で、
私が下の子たちのご飯の面倒まで見るようになり、
家族でお買い物もお食事も行かなくなっていました。

58歳の誕生日の2日後、脳梗塞をおこして倒れた父は、
それから長い年月寝付いて亡くなりました。

寝付いてと言っても、少しだけ麻痺が残っただけで、
自分の身の回りのことは出来ましたので、仕事だけは出来ないという、
仕事が嫌いだった父にとっては、良い生活だったと思います(笑)


その闘病生活のさなか、私は結婚したのです。

結婚するにあたり、元カレとの写真とか交換日記とか手紙とか、
あの頃はダイオキシンの問題も無かったので、
庭にあった焼却炉で燃やすことにしました。

着なくなった衣類や、それらのモノを燃やしていて、
ついでに、その頃あまり使っていなかった、
居間の押し入れの中も整理しようと思った私。

黄ばんだシーツや枕カバーを燃やし、束になった書類も燃やし、
ふとその奥にあった段ボールを見ると、
マジックインクで「芸術書」と大書してあります。

「あー父の『芸術書』か!」絵画集かグラビアかと思っていた私が見たモノは!

・・・男性の方々には想像がついたかもしれませんが、エロ本の数々でした。


もちろん、燃やしてやりましたとも、ぜ~んぶ!(爆)

あれを、あの頃も読んでいたかどうかは知りませんが、
ごっそり燃やされたのを発見した時の父の顔を想像すると、
ちょっと溜飲が下がる思いでした♪(笑)
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